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【東日本大震災1カ月 今何ができる】(6)
新幹線ホームや空港にあふれた人、人、人…。東日本大震災の後、福島第1原子力発電所の事故による放射性物質(放射能)漏洩(ろうえい)と計画停電の実施などで、東京を離れる企業や人が相次いだ。いまだ原発トラブルは続き、不安は解消されていないが、首都圏を離れた企業はほぼ平常通りに戻ってきているようだ。企業危機管理の専門家は「最悪な事態を想定した対応策を考えておくことが必要だ」と指摘する。(道丸摩耶)
◆外資系企業が中心
「震災直後から、社内の『危機管理委員会』が連日会議をしていた」と語るのは、東京都内の外資系金融機関に勤める女性だ。
「会社から『大阪に避難する人は新幹線代を出す』と通知が来た。会社が大阪のホテルを確保し、実際に行った外国人従業員や本国に帰った上司もいました」
3月下旬からは通常に戻ったが、「海外の拠点では、いまだに日本への出張が禁止されている」という。
外資系企業では、スウェーデン系カジュアル衣料の「H&M」が従業員約800人を関西に一時退避。たばこ大手の「フィリップモリスジャパン」が東京と大阪に「災害対策本部」を立ち上げた。従業員を自宅待機にしたり、出勤人数を絞ったりした国内企業もあるが、東京から離れたり国外に退避したりしたのは外資系企業が中心だ。
◆情報格差が原因
その原因として考えられるのが、日本国内と海外で流れたニュースの違いだ。
都内の外資系企業に勤めるフランス人の男性(40)は3月13日夜、仏大使館から「関東地方を離れるように」と連絡を受けた。フランスのニュースは原発事故を大きく取り上げていた。
日本人の妻(44)と長女(9)を連れて大阪に避難した。さらに、大使館から日本を出るよう言われ、18日に帰国。4月に日本に戻ったが、子供は今もフランスの学校に通う。妻は「ばかにされるんじゃないかと、日本人の友人にはフランスに避難したことを話せなかった」と振り返る。多くのフランス人はまだ、本国にとどまったままだ。
言葉の壁もある。都内のアジア系金融機関に勤める女性(46)は「外国人従業員は日本語のニュースが分からず、実態と異なる内容の海外ニュースに触れ、かなり不安になっていた。家族を本国に帰らせた人も多い」と話す。
ただ、こうした「情報格差」だけが原因で、外国人や外資系企業が首都圏を離れたわけではない。
◆それぞれの判断
企業の危機管理に詳しい野村総合研究所の三宅将之ERMプロジェクト部長は「外資系企業は『停電は起こるもの』という前提で、最悪の事態を想定しているところが多い。だが、日本の企業は、そうした最悪の事態の想定に弱い面がある」と指摘する。外資系企業は、規模は小さくとも二重の拠点を持つなどの対応策をあらかじめ持っていることが多いという。
鉄道の本数が減ったり、物が不足したり、と震災や計画停電は首都圏に大きな影響を与えた。「こうした日本人も困る事態に、生活基盤の弱い外国人はもっと困るだろうという予測も働いたのだろう」と、三宅氏は分析する。
首都圏を離れれば、電気や物資の消費集中が避けられる。「重要なのは、根拠の明らかな情報をそれぞれの立場で判断すること。判断は立場によって異なってもいい」と三宅氏。落ち着くまで首都圏から離れるという選択は、決して「行き過ぎ」ではないようだ。
災害に完璧に対応するにはコストがかかる。だが、そうした事態を想定し、会社の考え方を決めておくことはすぐにできる。今回の震災を、企業の危機管理を整える契機にしていきたい。=おわり
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